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    ☆投稿者さま
    「司法書士・行政書士まつむら・まつなが事務所」
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遺産分割調停においては、出てくる人を減らすため、相続分の譲渡・相続分の放棄が行われます

司法書士のお仕事を紹介します

 

 相続分の譲渡(民905)・相続分の放棄(条文なし。解釈上認められる)という手続きがあります。この手続きにメリットがある場面の1つとして、ものすごく人数が多い遺産分割調停があげられます。

 

 「わたしは遺産は、いらない~」という方は、遺産分割調停の流れの中で相続分の譲渡または相続分の放棄という手続きをふむことになります。そうすると、遺産分割調停にでていく必要がなくなります。裁判所も楽になりますね。

 

 このほか相続分の譲渡・相続分の放棄は、遺産分割調停のなかだけでしかできないわけではありません。相続分の譲渡・相続分の放棄が行われた場合の相続登記手続きについて以下ご説明いたします。

 

平成9年発行の熊本地方法務局発足50週年記念の登記決議集(改訂版)

平成9年発行の熊本地方法務局発足50週年記念の登記決議集(改訂版)

数次相続人間の相続分の譲渡と遺産分割協議の合わせ技で、相続登記1申請でオーケー

該当ページはこちらです
 

この記事で言いたいこと

  • [状況] 相続分の譲渡をうけた者がいる場合の相続登記のはなし。
  • [結論] 実務上複数の登記申請がなされているところですが、1個の申請で大丈夫です(その分、報酬がひくくなるのでご依頼者にやさしいです)。
  • [理論] 実務上複数の登記申請がなされている理由は、『複数の登記申請はできますか?できますよ!』という登記先例があるからです。
  • [理論] 1個の申請でできる理論をご説明ください。
  • [実践] 1個の申請でできるというなんらかの登記先例など(登記官を説得する根拠)はありますか?→平成8年7月18日の熊本地方法務局で開催された登記事務打合せ会議(熊本地方法務局編集の熊本地方法務局発足50周年記念「登記決議集」に認められた事案が収録されています。

 

 

前提となる平成4年3月18日民三第1404号第3課長回答とは

(1)相続を原因とする乙・丙及び戊名義への所有権移転の登記

(2)乙持分について相続を原因とするB及びC名義への持分全部移転の登記(Aの印鑑証明書付相続分譲渡証書添付)

(3)丙持分について相続を原因とするX名義への持分全部移転の登記

(4)戊及ぴX持分について相続分の売買又は相続分の贈与等を原因とするB及びC名義への持分全部移転の登記を順次申請するのが相当である

 

平成4年3月18日民三第1404号第3課長回答の事案

 要するに、順番に登記しなさい!という登記先例なのです。被相続人甲がなくなったとき、すでに丁は死亡しているため最初の相続人は、乙、丙および戊です。そこからまたそれぞれの相続登記をしなさい、というものです。

 

 登記先例がそういっているならば、順番に登記するしかないんじゃないか?というところなのですが、雑誌「登記研究」536号157ページにこの登記先例に関する解説があります。BCで遺産分割協議(調停)をすれば「昭和42年11月19日乙相続、昭和44年8月21日相続」で直接BC名義への相続登記ができますよ、と。

 

 そして、登記先例の事案は、遺産分割協議(調停)がなされていないんですね。それならば、登記先例の事案では、順番に(複数回)登記しなさい!といっている理由もわかります。そうするしかないでしょう。

 

 逆に、BC間で遺産分割協議(調停)がなされたならば、1申請の相続登記でいけます!ということを次にご説明します。

 

相続分の譲渡・相続分の放棄をうけた者の地位は?

 

 相続分の譲渡・相続分の放棄をうけた者の地位はどういう立場なのか?については、最高裁平成13年7月10日判決があります。

 共同相続人間で相続分の譲渡がされたときは、積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転し、譲受人は従前から有していた相続分と新たに取得した相続分とを合計した相続分を有する者として遺産分割に加わることとなり、分割が実行されれば、その結果に従って相続開始の時にさかのぼって被相続人からの直接的な権利移転が生ずることになる。

このように、相続分の譲受人たる共同相続人の遺産分割前における地位は、持分割合の数値が異なるだけで、相続によって取得した地位と本質的に異なるものではない。そして、遺産分割がされるまでの間は、共同相続人がそれぞれの持分割合により相続財産を共有することになるところ、上記相続分の譲渡に伴って個々の相続財産についての共有持分の移転も生ずるものと解される。

 

 相続分の譲渡についての判例です。この中で、相続分の譲受人たる共同相続人の遺産分割前における地位は、(中略)、相続によって取得した地位と本質的に異なるものではないという判断があります。これはどういうことなのかといいますと、相続分の譲渡をうけた者も遺産分割の当事者の1人ですよ(遺産分割は全員参加しないとその効力が生じない)というものです。

 

 とするならば、登記先例の事案においても、平成3年10月1日の相続分の譲渡のあとで、BC間で遺産分割協議(調停)をすれば、全員参加の遺産分割となります。中間者を1人とする遺産分割としないといけないのですが、全員参加の遺産分割によって、「昭和42年11月19日乙相続、昭和44年8月21日相続」で直接BC名義への相続登記ができます、ということになります(ここは司法書士向けの説明になっています)。

 

まとめ

 

 今、所有者不明土地の問題が多くニュースに取り上げられています。そのなかには、相続人が膨大な数になりどうしようもないという不動産もあります。司法書士は、不動産と登記の専門家として、遺産分割調停の書類作成などをとおして、このような問題に取り組んでいます。またこの記事では、登記官によっても判断が分かれるような事案のときに、どのようにして登記官を説得するか?というテーマもありました。